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この記事で紹介すること
特に趣味で楽器の演奏をしている方は、プロとして楽器の演奏で生計を立てている人への憧れもある方も多いと思います。
今から生計立てるのは現実ではないなと思いながらも、どうやったらそんなプロになれるのか、気にならないでしょうか。また、もし今から本気で音楽家として食べていくことを目指している若い方もいらっしゃるかと思います。
そのような方々向けに、大変興味深い書籍を紹介したいと思います。
紹介する書籍
その書籍のは相澤真一他『音楽で生きる方法 高校生からの音大受験、留学、仕事と将来』(青弓社、2020)です。
この本に出合ったのは、図書館でした。最近は子どもの絵本を借りるためによく図書館に行っているのですが、ついでに、私自身も音楽関係の書棚や、高校生向けの書籍の本を見ています。その中でたまたま手に取ったのがこの本でした。その後、改めて読み返したいと思い再び自分で購入しています。
この書籍の特徴
様々な楽器の「音楽で生きていく人の声」が満載
この書籍の中では、音楽大学に進学し、現在音楽家として活躍している人たちの声をたくさん集めていることです。実際に「初めに」によると、20人以上の音楽家にインタビューをされています。そのため、単純にこの本を読むだけで20人以上の音楽家の人生を学ぶことができます。実際X(旧Twitter)でも、以下のような感想が見られます。
鋭い分析により生き方を追体験できる
ただ、単純に20人以上の音楽家の話を聞くだけであれば、20個のインタビュー記事を読むのでも良いかもしれません。しかし、この書籍のすごいところは、何よりも、「初めに」に書いてある以下の点です。
音楽で生きていく人たちの声を集め、音楽家の教育や労働について研究する社会学者二人と職業音楽家二人の知恵を突き合わせて、音楽で生きていくことについて分析し、議論して、結実したのが本書です。
つまり、単にインタビューをして紹介をしているだけでなく、研究者の視点から、内容を質的調査の方法で分類・分析をし、さらに、それを「音楽の道に進んでいくうえで起こりうるイベントを時系列で並べて」いるので、まさに生き方を追体験することができます。
著者は4名で、相澤氏、高橋氏が研究者の立場から、坂本氏(チューバ)、輪湖氏(メゾソプラノの歌手)は、音楽家の立場から分析しており、しかも、参考文献までしっかりとついています。研究者の立場としても、音楽家の立場としても非常に役立つ情報が満載ですね。
高校生向けなので読みやすい
また、3点目で非常に重要なのが、「初めに」で「本書は、高校生が読むことをイメージして書いています。」とある通り、基本的に高校生を対象とした書籍なので、文体も非常に読みやすく、読むことに苦労しません。
特に自分が印象に残った部分
この書籍はどのパートも読んでいて大変興味深かったのですが、個人的に読んでてとても印象に残った部分をいくつかご紹介したいと思います。
① 本当に音楽家を目指したいのか(第9章の2)
この章の中で「多くの人が音楽家を目指す環境のなかで、そうではないものを目指すことは邪道、正攻法の音楽家を目指すことだけがたった一つの答えだと思っている人も多いでしょう。」(しかし)「ほかの人とは違う、自分だけの答えを目指してもいいのではないでしょうか。」という記述がありました。
私は、あまり音楽大学についてイメージがわいていませんでしたが、音楽大学に入っていたら、やはり「正攻法の音楽家」が「答え」だと思ってしまう人も多いというのも新鮮な驚きがありました。確かに、音楽をしてきた人たちだからこそ、例えばオーケストラの入団等「正攻法」を目指すことが「王道」との考えを持ちやすいのかもしれません。
どこの世界にでも●●が王道、××は邪道、という文化(規範意識?)があり、そして、それに必ずしも沿わずに自分の道を切り開いていく人たちがいると思うと、なんだかとても胸が熱くなりますね。
② 演奏以外の音楽の仕事の可能性(第8章)
他の部分は、基本的には「プロの人」の話で自分の人生とは重なる部分は少ないなと思っていたのですが、特に第8章は一気に自分の視点からも考えさせられました。
というのも、私は全くプロとは程遠いですが、何とか音楽も仕事にできるとよいなとは思っています。そのような観点からすると、「演奏にこだわらない」ということは、音楽を専攻してきたわけではない(プロとは)逆の立場から「なるほど」と思いました。
少しずれるかもしれませんが、音楽を仕事にしようとするときに、必ずしも「プレーヤー」である必要はありません。ライブ等のイベントを企画する側もあり得ますし、楽器屋で働いたり、楽器メーカーで働いたり、レコード会社で働いたり、音楽にかかわる仕事自体もいくらでもあるように、音楽への関わり方も多様だと思います。
そうだとすると、楽器の演奏の上手・下手にかかわらず、音楽を仕事とする方法は何かあるはずだなと思うようになり、そのような観点で、自分自身の音楽とのかかわり方を考えるきっかけにもなりました。
③ セルフ・プロデュースの必要性(第5章ー5)
3点目は、セルフプロデュースの重要性について書かれた部分が第5章ー5です。
例えば、音大を出て一般企業に就職した後、Youtuberとしてデビューしたハラミちゃんも、先輩がYoutubeに挙げてくれたことをきっかけに、Youtuberのピアニスト「ハラミちゃん」が誕生したそうです(以下のブログに詳しくご紹介させていただいています。)。ご本人は「ピアニスト」はいったん諦めたとしていますが、今はピアニストとして大活躍されています。
最近はSNSも普及し、かなり「個人」としての発信をして仕事にしている人も数多くいらっしゃいますが、このようなセルフプロデュースの重要性は音楽業界でも変わらないのだなぁと思いとても印象に残りました。
最後に
ということで、以上『音楽で生きる方法 高校生からの音大受験、留学、仕事と将来』を紹介させていただきました。改めて、純粋な趣味を超えて、音楽にかかわって生活していこうとしている方々全般におすすめの書籍だと思いました。
ちなみに「はじめに」の一部を公開していますので、ご関心のある方はぜひこちらもご覧いただければと思います。
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