ミュージカル「ONCE ダブリンの街角で」を見て(ネタバレあり)

once 聴く

この記事で紹介すること

みなさん、こんにちは。今日は、2006年に公開された「once ダブリンの街角で」という映画のミュージカルのコンサート版についてご紹介させていただきます!本当は夫婦で見に行く予定だったのですが、諸事情により妻に見に行ってもらいました。ということで、以下妻の立場で書かせていただきます笑。

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実は、この映画、2012年にミュージカル化されていたらしいのですが、さらに今回、音楽の魅力がよりダイレクトに伝わるよう台詞量の調整などがされて、コンサート版になったものが、ロンドン・ウェストエンドの豪華キャストにより来日公演されるということでした。私は、後で書く通り学生時代にこの映画版を見ていたことから、懐かしさのあまり、公演初日に観に行って来ました。

出演者全員が、ギターやピアノ、バイオリン、アコーディオンなどの楽器を演奏するという触れ込みだったので、Falling Slowlyをはじめとする名曲サウンドトラックを生で聴けるのをとても楽しみにしていたのですが、…期待以上でした!!

このミュージカルは「音楽により出会い、音楽によりつながり続ける」という内容で、それを生演奏の音楽で味わえる、音楽好きの方々はより深く味わえる内容だと思います。特におすすめのポイントを

  1. ストーリーの良さ
  2. ライブの良さ

の2点に分けて紹介したいと思います。若干ネタバレがあるので、ストーリーを知りたくない方はここまでとしていただければと思います。

おススメポイント①:ストーリーの良さ

音楽があるからこその出会い

映画の舞台となっているダブリンは、イギリスの隣に位置するアイルランドという国の首都です。そんなアイルランドの首都、ダブリンの街には、ストリートミュージシャンが数多くいるそうで(エンヤ、U2、シネイド・オコナーといった世界的なアーティストを数多く輩出しています。)、この映画の主人公「Guy」(物語の中で名前は明かされない)も古びたギターで自作の歌を弾き語りする貧しいストリートミュージシャンの一人です。

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彼は、それほど若くない年齢ですが、長年付き合った恋人に去られ、情熱を傾けてきた音楽でも評価されず、日中は父親の経営する掃除機修理屋で働いており、鬱屈した日々を送っていました。もう音楽すら捨てようとしていた彼ですが、最後の路上ライブをしていたときに、彼の音楽に心惹かれたひとりのチェコ移民の女性「Girl」(彼女もまた物語の中で名前は明かされない)と路上で出会います。

彼は彼女のペースに巻き込まれていきます。楽器店で、彼女はピアノを、彼はギターで、彼が作った歌(「Falling Slowly」⇒映画版の動画はこちら)を一緒に弾き、歌うことになります。出会ったばかりの二人ですが、奏でる音楽は完璧に調和していました。このような運命的な出だしで、名もなき二人の物語は始まります。

こんな感じの音楽を通じた出会い、特に楽器やっている人にとっては憧れですよね。

音楽があるからこそのつながり

今回観たコンサート版で繰り返し説かれるもう一つのキーワードは、劇中の正確な表現ではないのですが、「恐怖に生きる者は惨めさの中で死ぬ」ということです。要は、「後悔しないですか?」ということだと理解しました。特に劇のストーリーでは、以下のような結末を迎えます。

【劇の結末:彼に残ったもの】

まず、彼は、彼女の母親に挑戦を励まされ、スタジオで彼女や仲間とともに手ごたえのあるレコーディングを行います。そして、そのデモテープを持って別れた恋人のいるニューヨークに行き、大手レコード会社と契約するという希望を持ってダブリンを旅立つ…というところで劇は終わります。

【劇の結末:彼女に残ったもの】

彼は、音楽の感性が合う、運命的な出会いをした彼女とは、告白するも恋人にはなれず(彼女には幼い娘がいて、チェコに一人帰った夫への愛はもうないようですが、娘から父親を奪うことは出来ないと思ったのでしょう。)、一緒に音楽を創るという夢をかなえることはできませんでした。代わりに、彼は、貧しくて楽器店にあるピアノを弾くしかないピアニストの彼女に、自分が新天地で挑戦するために父親から渡された小切手を使って(かなりのお金を使ったでしょう)、ピアノを買って贈ります。

【お互いの身を音楽に代えて

彼の今後のニューヨークでの挑戦の傍らには、彼女が渾身の演奏をしたデモテープが残り、ダブリンで貧しい生活を続けるであろう彼女の傍らには、彼が夢に挑戦するための資金で贈られたピアノが残る。お互いの身を音楽に代えて寄り添う二人の姿が印象です。そして、何より、二人には、二人で共に奏でた音楽が確かに残っています。

「後悔をしないか」という問いの中で、彼そして彼女は、物理的にも別々の道を歩むことになりました。しかし、その中で、唯一、相手に与えられる最高の物を贈り、あるいは、最高の音楽体験を共有することで、二人はつながり続けているのです。

おススメポイント②:ライブの良さ

そして、今回のミュージカルの良さは、上記のストーリーの良さに加えて、ライブの良さが凝縮されていました。

「音楽による絆」への説得力が増す

完成された録音の音楽もいいですが、やっぱりライブならではの、その瞬間に確かに存在する音が持つ迫力は違います。

主人公の男女は、お互いそれまで歩んできた人生の歴史があることで、結局、始めから終わりまで、音楽によってしかつながらない関係性にとどまる(恋人にならずに終わる)のですが、ミュージシャンである二人にとって、音楽でつながることができたということは、誰よりも何よりも強い絆で結ばれているのだという描かれ方がされており、ライブの音の実在性によって、この「音楽による絆」という物語の説得性が増している気がしました。

アイルランドを実感できる

私は、学生時代にアイルランド文化の授業を受講していて、この映画もクラスで観たのですが、アイルランド音楽では、足踏みで拍を刻むということがよくされています。

今回のコンサート版でも、それが演奏に取り入れられていて、「そうそう、アイルランド音楽ってそうだよね!」と思い出して嬉しくなりました。出演者が演奏の時、力強く足踏みで拍を刻んでいたのですが、それが客席にもリズムの地響きになって届き、聴いている私も勝手に身体がリズムに合わせて揺れそうになるというか、アイリッシュダンスとか踊りたくなりました(笑)。

演奏している側だけでなく聴いている人も音楽の輪に引き込むのが、アイルランド音楽の魅力で、ひととき、ダブリンのアイリッシュ・パブでギネスビール片手に演奏を観ているような気分に浸れて楽しかったです(私は飲めない体質ですが(笑))。

展示

なお、今回の講演では、舞台で使われている小物についての展示もありました。しっかりギターもあり、展示のものはマーチンのものでしたが、舞台の中では「古いテイラーのギター」ということでした笑。

tools including a guitar

このあたりもアコギ好きのみなさまとしては気になるところですね笑。

最後に

皆さんには、この物語で描かれる「音楽による絆」は、どう響きますでしょうか。この物語はハッピーエンドでしょうか、バッドエンドでしょうか。皆さんにとって、音楽はどんなものですか?きっとその答えによって、二人の恋の結末の捉え方は変わってくるのではないかなと思います。いずれにしても、音楽を愛する方なら、きっとこの物語の深いところまで味わうことができるはずだと思います。

紡いだ音の先から跡形もなく消えていってしまうけれど、その瞬間には確かにハーモニーが実在していて、ずっと心に残るもの…音楽のそういう不思議な実在性が、二人の恋のなりゆきそのままで、いつまでもビタースィートな余韻が残ります。

「ONCE ダブリンの街角で」コンサート版は、8月4日~13日まで、渋谷の東急シアターオーブにて公演中です。当日券も販売されていますので、ご興味を持たれた方はご都合がつけばぜひ足をお運びください。また、ミュージカルのもとになった映画版もU-NEXTにて配信されていますのでぜひご覧ください!

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